底辺ネットライターが思うこと

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飴が砕けて飴つぶて

先日、友人宅に泊まらせてもらった。

とても仲の良い友人で、ぐだぐだと話したり、DVDを観たり、漫画を読んだりなど、とても有意義に過ごさせていただいた。あまりにも楽しくて二連泊してしまったほど。

「この漫画の主人公があなたに似ている」と言われた。「頭が良い!合理的!」と補足してくれたけれど、私は傍から見てこんなにも冷徹な仕事人間なのだろうか、という思いの方が強かった。

魔王の秘書(1) (アース・スターコミックス)

魔王の秘書(1) (アース・スターコミックス)

 

 ちなみに私は眼鏡をかけていない。裸眼。

 

それはさておき、その友人が私の隣でスマホゲームを始めた。

ゲームをする印象のない友人だったのでとても興味があって、何のゲームかを尋ねたら「キャンディークラッシュ」だと教えてくれた。

私は颯爽とiPadを取り出した。

まだキャンディークラッシュが公開されて間もない頃、必死になってプレイした時期があった。ここ何年か全くプレイしていなかったが、進めたデータを消すのは忍びなく、iPadにアプリを残していた。

アプリを起動して友人に見せ、「凄い進んでる!!」という期待通りのリアクションに満足してから、久しぶりにプレイしてみた。なかなかクリアできなくて諦めていたステージ。そう簡単にはクリアできないだろうと思っていたのだけれど、何と一度でクリアできた。驚いた。プレイ人口が増えてレベルが甘くなったのだろうかと邪推するほどだった。

クリアしてしまったせいで楽しくなってしまい、少しの間、二人とも無言でキャンディークラッシュをプレイした。何がクリアできなくて投げ出したのかわからなくなるほど、すいすいとクリアできた。

それから家に帰ってもしている。今日も二時間ぐらいはプレイした。

目が痛くなって、夜、電気も点けずにベッドの中でプレイしながら夫の帰りを待っていたことを思い出した。

 

 

キャンディークラッシュを始めた頃、私は主婦だった。

暗がりの中でiPadの光に照らされる私の姿を帰宅した夫が見つけて、とても驚いていたことを覚えている。その後、「夢中になれることが見つかって良かった」と喜んでくれたことも。

あまりにもハマりすぎて、昼夜問わず、と言っていいぐらい、平日も休日も夫の隣でずっと遊んでいた。夫は嫌な顔せず、優しく寛容に見守ってくれた。一緒に遊んでくれた。

音声をONにしていると、連鎖だか何だかをした時に、上品な紳士らしい声で「Sweets!」という賛美の言葉を投げかけて貰える。パズルゲームの効果音らしくないなぁと思いながら、何となく付けたままにしていたのだけれど、夫がそれを気に入り、喜々として声真似を始めた。

音が流れる度にそれを繰り返すから、パズルどころじゃなくて、とても楽しかった。

 

こうした話をしているのは、感傷に浸って「あの頃に戻りたい」とか言いたい訳ではない。

私は、夫と離れて以来、寂しさらしい寂しさを感じたことがない。

「離婚して独りだったら寂しいでしょう」とかよく言われるけれど、笑い飛ばせるぐらいは寂しくない。 

正直、不思議だった。私は元々とても寂しがりで怖がりで、だからこそ強そうに振る舞って。毎日、夫が隣にいなかったら眠れなかった。一分でも早く帰って来て欲しかった。

今は、独りでだって眠れる。独りの時間を楽しめる。

本を読んだり、文章を書いたり、出掛けたり。何をしていてもずっと心がしっかりとしていて揺るがない。(ストレスフルでハイになったり落ち込んだりはするけれど)

つい、今日まで、それは「文章を自由に書けているからだ」と思っていた。私は書かないと死んでしまう類の人間だから、書いてさえいれば寂しくないのかと。

「私はなんて薄情な人間なんだろうなぁ」と自らにがっかりしていたぐらいだった。

 

声真似に引きずり出された思い出を胸にキャンディークラッシュをしていたら、ふと、何の前触れもなく、私が寂しくないのは夫が私を「人」として愛してくれていたからだと気付いた。

夫との生活を思い返してみると、病める時も健やかなる時も、私は大事にされていた。そのおかげで「人」としての確固たる自信がある。誰に何を言われても何をされても、「でも、私は大丈夫」と動じないでいられるほど。

寂しい、と思う時は人それぞれだと思うけれど、「誰かに認められたい」「愛されたい」という要素が大きいと私は思っている。

私は夫と過ごしたおかげで、常に「認められている」し、「愛されている」と思えるから、だから寂しくないのだと気付いた。

ふとそう気付いて、とても納得して、思えば思うほど深く頷いてしまって、笑って、気付いたら泣いていた。そのぐらい、強烈な気付きだった。砕けた飴のつぶてを喰らっているのかと錯覚するほど、心に甘い痛みが幾度となく走った。

「今から泣くぞ」と思って泣くとすぐに泣き止むことができるけど、「気付いたら泣いていた」という時は、自分でも驚くほど涙が止まらない。多分、一時間ぐらい泣いていたと思う。涙がこぼれて胸が空いたはずなのだけれど、満ち足りた気分だ。

結婚しても寂しさに喘ぐ人がいる中で、独りでも立っていられるほどの愛情をいただけた。

好きなことができないと嘆く人がいる中で、こんなにも自由に筆を走らせることができている。

私は本当に、幸福だと思う。

これまで生きてきてずっと不幸だと思っていた私にここまで思わせてくれたのだから、やっぱりあの人は素晴らしい人だと思う。

二度と会うことはないだろうけれど、私以上に幸福でいてくれたらと願ってやまない。